医療機関やヘルスケア企業で働く私たちにとって、文献の要約や各種文書の作成、患者・利用者からの問い合わせ整理といった事務作業は、日々の業務時間の大半を占めています。診療記録や報告書の作成、最新の医療文献のキャッチアップ、問い合わせ対応のログ整理など、これらの作業は正確性が求められる一方で、現場の負担も大きいのが実情です。AI コーディングアシスタントの Claude Code は、こうした事務作業を支援するツールとして注目を集めています。本記事では、医療・ヘルスケア領域における Claude Code の具体的な活用シーンと、導入時に必ず押さえるべきセキュリティ・ガバナンスの実務を、株式会社デジライズの支援実績をもとに解説します。

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本記事の結論: Claude Code は医療現場の事務負荷軽減に有効だが、診断・医療判断には使わず、患者情報の取扱いルールを事前に整備することが導入の大前提

Claude Code が医療・ヘルスケアで貢献できる領域

Claude Code は、文章の読解・要約・生成を得意とする AI アシスタントです。医療機関やヘルスケア企業では、以下のような事務作業で活用できます。

文献の要約とナレッジ整理
医学論文や最新のガイドラインを読み込み、要点を箇条書きで抽出する作業は、医師や研修医、医療事務担当者の日常業務です。Claude Code に論文の PDF テキストや URL を渡すと、目的(臨床での応用可能性、統計手法の確認など)に応じた要約を数分で生成できます。私が支援した医療法人では、週次の文献レビュー会議の事前準備時間が従来の半分程度に短縮された事例があります。

院内文書・報告書のドラフト作成
診療報酬の請求資料、院内会議の議事録、患者向け説明資料のドラフト作成も、Claude Code が支援できる領域です。箇条書きのメモや音声文字起こしテキストを渡し、「患者向けに平易な表現で」「A4 1枚に収める」といった指示を加えることで、初稿を短時間で得られます。この初稿をもとに医師や事務担当者が加筆・修正すれば、文書作成の負担を軽減できます。

問い合わせ対応の整理・分類
患者や利用者からのメール・電話の問い合わせ内容をカテゴリ分けし、FAQ を整備する作業も、Claude Code の得意分野です。過去の問い合わせログをテキスト化して渡すと、頻出する質問のパターンを抽出し、回答のテンプレート案を提示できます。コールセンター部門では、この機能を使って FAQ データベースの更新頻度を高めている企業もあります。

診断・医療判断には使わない: Claude Code はあくまで文書作成・整理のツールです。診断や治療方針の決定、患者の状態判断には使用できません。医療行為の最終判断は必ず医師が行います。

医療領域で Claude Code を使う前提:患者情報の取扱いルール

医療・ヘルスケア領域で AI ツールを使う際、最も重要なのは 個人情報・患者情報の取扱い です。Claude Code を含む AI サービスは、入力されたデータを学習に使う可能性があるため、患者情報を直接入力してはいけません。以下の原則を守ることが導入の大前提です。

1. 患者情報の匿名化・削除を徹底 — 氏名・カルテ番号・生年月日・住所など、個人を特定できる情報はすべて削除または仮名化してから Claude Code に入力する

2. 院内ルールで入力可能な情報を明文化 — 「文献の要約には使える」「患者の問い合わせ内容は匿名化すれば可」など、部門ごとに利用範囲を文書で定める

3. API 経由・オンプレミス環境の検討 — Anthropic の API 利用規約では、ユーザーが明示的に許可しない限り入力データを学習に使わないとされています。より厳格な管理が必要な場合は、API 経由での利用や、将来的なオンプレミス対応版の採用も視野に入れます

4. 定期的な監査ログの確認 — Claude Code の利用履歴(誰が・いつ・どのようなプロンプトを入力したか)を記録し、定期的に確認する体制を作る

これらのルールは、医療機関が既に運用している個人情報保護方針や情報セキュリティポリシーと整合させる必要があります。詳細なチェックリストは セキュリティ・ガバナンス体制の構築ガイド で解説しています。

具体的な活用シーン:文献要約の実務

ここでは、医療現場で最も活用頻度の高い「文献要約」の手順を具体的に示します。

前提条件

  • 医学論文の PDF をテキスト化したもの、または PubMed 等の公開情報を使用(患者情報は含まない)
  • 要約の目的を明確にする(例:臨床応用の可能性、統計手法の妥当性確認)

入力プロンプトの例

以下の論文を読み、以下の観点で要約してください。
- 研究の目的と背景
- 対象患者の属性(人数・年齢層・疾患名)
- 介入内容と比較群
- 主要な結果(有効性・安全性)
- 臨床現場での応用可能性

【論文テキスト】
(ここに論文の本文を貼り付け)

Claude Code は、指定した観点ごとに箇条書きで要点を抽出し、A4 1〜2枚程度の要約を数分で生成します。この要約をもとに、医師が最終的な判断を加えれば、文献レビューの準備時間を短縮できます。

注意点

  • 要約結果をそのまま院内資料や学会発表に使わず、必ず医師が内容を検証する
  • 統計的有意性や信頼区間など、数値の解釈は慎重に確認する
  • 複数の論文を比較する場合は、バイアスの有無や研究デザインの違いも考慮する

具体的な活用シーン:患者向け説明資料のドラフト作成

患者や家族向けに、治療内容や検査の説明資料を作成する場面も多くあります。Claude Code を使えば、専門用語を平易な表現に変換したドラフトを短時間で得られます。

手順

  1. 医師が箇条書きで説明したい内容をメモする(例:「糖尿病の食事療法」「MRI 検査の流れ」)
  2. Claude Code に以下のようなプロンプトを入力する
以下の内容を、中学生でも理解できる平易な表現で A4 1枚の説明資料にまとめてください。
専門用語は最小限にし、具体例を交えて説明してください。

【説明したい内容】
- 糖尿病とは何か(血糖値が高い状態が続く病気)
- 食事療法の目的(血糖値をコントロールし、合併症を予防)
- 具体的な食事の工夫(野菜を先に食べる、間食を減らす、など)
  1. 生成されたドラフトを医師が確認し、医学的な正確性や表現の適切さを修正する

この方法では、ゼロから文章を書く手間が省け、医師は最終的な監修に集中できます。患者向け資料の作成頻度が高い診療科(糖尿病内科・循環器内科など)では、特に有効です。

具体的な活用シーン:問い合わせ対応の整理

医療機関のコールセンターや受付窓口では、日々多数の問い合わせが寄せられます。これらを整理し、FAQ を整備する作業は、事務担当者の大きな負担です。

手順

  1. 過去1か月分の問い合わせ内容を Excel や CSV でエクスポートする(氏名・電話番号など個人情報は削除)
  2. Claude Code に以下のプロンプトを入力する
以下の問い合わせログを分析し、頻出する質問のカテゴリと、各カテゴリの典型的な質問例を抽出してください。
また、各カテゴリに対する回答のテンプレート案も提示してください。

【問い合わせログ】
(ここに匿名化したログを貼り付け)
  1. 生成されたカテゴリと回答案を、医師や事務責任者が確認・修正し、FAQ データベースに登録する

この方法により、FAQ の整備スピードが上がり、窓口担当者が迅速に回答できる体制を作れます。

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API 経由の利用: Anthropic の API を使えば、入力データを学習に使わない設定が可能です。患者情報を含まない問い合わせログであっても、より厳格な管理が必要な場合は API 経由の利用を検討してください。

導入時の体制整備:セキュリティとガバナンス

Claude Code を医療機関で導入する際は、以下の体制整備が不可欠です。

項目内容
利用範囲の明文化「文献要約・文書ドラフト作成には使える」「患者情報は匿名化しても入力しない」など、部門ごとに利用可能な範囲を文書で定める
責任者の設置AI ツールの運用責任者(情報システム部門・医療安全管理者など)を明確にし、問題発生時の対応手順を整備する
研修の実施全職員に対し、AI ツールの適切な使い方(個人情報の扱い・プロンプトの書き方・結果の検証方法)を研修する
監査ログの管理Claude Code の利用履歴を記録し、定期的に確認する仕組みを作る(誰が・いつ・どのようなプロンプトを入力したか)
外部連携の確認API 利用やデータ保存場所(クラウド・オンプレミス)を確認し、院内のセキュリティポリシーと整合させる

これらの体制整備には、情報システム部門・医療安全管理部門・法務担当者の連携が必要です。DigiRise では、こうした体制構築をコンサルティングサービスで支援しています。詳細は Claude Code 法人導入コンサルティングガイド をご覧ください。

DigiRise の支援実績:医療機関での導入事例

私たちデジライズが支援した医療法人では、以下のような成果が報告されています。

  • 文献レビュー会議の準備時間短縮: 週次の文献レビュー会議で、各医師が事前に論文を要約する時間が従来の半分程度になった
  • 患者向け資料の作成頻度向上: 糖尿病教室などで使う説明資料の作成頻度が月2回から週1回に増え、患者への情報提供が充実した
  • 問い合わせ対応の均質化: FAQ データベースの整備により、窓口担当者による回答のばらつきが減少した

これらの成果は、あくまで事務作業の効率化によるものであり、診断や治療方針の決定には Claude Code を使用していません。また、患者情報の取扱いルールを事前に整備し、全職員に研修を実施した上での導入です。

3部門
対象(文献レビュー・患者説明・問合せ)
4週間
体制整備期間の目安
全職員
研修対象

他の AI サービスとの役割の違い

医療・ヘルスケア領域では、他にも様々な AI サービスが提供されています。Claude Code との役割の違いを理解しておくことが重要です。

画像診断支援 AI
CT や MRI の画像を解析し、病変の候補を提示する AI は、画像診断の支援に特化しています。Claude Code は文章の読解・生成が得意であり、画像診断には対応していません。

電子カルテ連携 AI
電子カルテに直接統合され、診療録の自動記載や処方箋の候補提示を行う AI もあります。Claude Code は単体で文書作成を支援するツールであり、電子カルテとの連携は別途開発が必要です。

音声認識・文字起こし AI
診療中の会話を文字起こしし、診療録の下書きを作成する AI もあります。Claude Code は文字起こし後のテキストを整形・要約する役割を担います。

これらの AI サービスと Claude Code を組み合わせることで、より広範な業務効率化が可能になります。ただし、複数のツールを導入する際は、データの受け渡し方法やセキュリティポリシーの整合を慎重に検討する必要があります。

まとめ

Claude Code は、医療機関やヘルスケア企業における文献要約・文書作成・問い合わせ対応の整理といった事務作業を支援できるツールです。導入時は、以下の点を必ず押さえてください。

  • 診断・医療判断には使わない: 最終的な医療行為の判断は必ず医師が行う
  • 患者情報の取扱いルールを事前に整備: 個人を特定できる情報は入力しない、匿名化の手順を明文化する
  • 利用範囲の明文化と研修: 部門ごとに「何に使えるか」を文書で定め、全職員に研修を実施する
  • 監査ログの記録と確認: 利用履歴を記録し、定期的に確認する体制を作る

これらの前提を満たせば、Claude Code は医療現場の事務負荷を軽減し、医師や事務担当者がより本質的な業務に集中できる環境を作れます。ただし、導入にはセキュリティ・ガバナンスの専門知識が必要であり、自己流での運用はリスクを伴います。

株式会社デジライズでは、医療機関向けの Claude Code 導入支援を「研修」と「コンサルティング」の2本柱で提供しています。研修では、職員が安全に AI ツールを使うための実務スキルを習得できます。コンサルティングでは、利用範囲の明文化・監査ログの管理体制・既存の情報セキュリティポリシーとの整合など、組織全体のガバナンス体制を構築します。まずは無料相談で、貴院の課題をお聞かせください。Claude Code の基本的な機能や導入の流れについては Claude Code 導入ガイド もご参照ください。

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