会計事務所や税理士法人では、申告業務の繁忙期に担当者が深夜まで調書を作成し、顧問先への説明資料を手作業で整える――そんな現場を私は何度も目にしてきました。Claude Code のような AI コーディング支援ツールが登場した今、「士業の現場でも使えるのか」という問い合わせを多くいただきます。結論から言えば、最終判断は必ず有資格者が行うという前提のもと、申告補助資料の下書き・調書テンプレートの整備・顧問対応文書の作成支援といった定型的な準備作業を効率化できる可能性があります。本記事では、会計事務所が Claude Code を導入する際の実務上の判断基準・守秘義務への配慮・具体的な活用場面を、抑制的かつ検証可能な範囲で整理します。

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本記事の結論: Claude Code は申告補助資料・調書テンプレート・顧問対応文書の下書き作成を支援できるが、最終判断と機密管理は有資格者が担う体制が必須

Claude Code が会計事務所で担える役割

士業の実務では、税法・労働法の解釈や顧問先への助言といった専門判断は有資格者が行う必要があります。一方で、以下のような定型的な準備作業は AI の支援対象になり得ます。

  • 申告書添付資料の下書き: 勘定科目内訳書・固定資産台帳・消費税計算シートなど、数値や項目を整理するスプレッドシート作業
  • 調書テンプレートの整備: 源泉徴収票・支払調書・法定調書合計表のフォーマット生成やマクロ作成
  • 顧問対応文書の作成支援: 決算説明資料・税務論点メモ・顧問先向け FAQ の下書き

専門判断の禁止: 税額計算の正否・税法適用の可否・顧問先への助言内容は、Claude Code に判断させず、必ず有資格者が確認・承認する運用とする

Claude Code はあくまで「下書きを作る支援者」であり、最終的な申告書への押印・提出判断は税理士・社労士が行う――この線引きを社内で明確にすることが、導入の第一歩です。

守秘義務と機密管理の設計

会計事務所が扱うデータには、顧問先の財務情報・個人番号・給与明細など高度な機密が含まれます。Claude Code を利用する際は、以下の対策を組み合わせて守秘義務を担保します。

1. 入力データの匿名化・サンプル化 — 実際の顧問先名・金額を入力せず、「A社」「サンプル数値」で代替。調書フォーマット作成やマクロ生成なら、ダミーデータで十分動作確認できる

2. Claude.ai の Projects 機能で案件ごとに分離 — 顧問先ごとに Project を分け、誤って別案件のデータを参照しないよう運用ルールを定める

3. 社内ガイドラインで禁止事項を明文化 — 「個人番号の入力禁止」「財務データは必ず匿名化」「生成物は必ず有資格者が確認」といった基準を文書化し、全スタッフに周知

4. ログ管理とアクセス制限 — 誰がいつどの Project を使ったかを記録し、定期的に監査。必要に応じて特定の担当者のみに利用を限定

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Anthropic のデータポリシー: 執筆時点の公式情報では、Claude API および Claude.ai のチャット内容は原則モデル学習に使用されないとされているが、最新の利用規約・プライバシーポリシーを必ず確認し、顧問先への説明責任を果たす

セキュリティ要件の詳細は /blog/security-governance-checklist で網羅的に解説していますので、併せてご参照ください。

具体的な活用場面と実務上の注意点

申告書添付資料の下書き

法人税・消費税の申告書には、勘定科目内訳書や消費税計算シートといった添付資料が必要です。Claude Code を使えば、以下のような作業を支援できます。

作業内容従来の手順Claude Code 活用例最終確認
勘定科目内訳書Excel で科目ごとに手入力「科目リストから内訳書フォーマットを生成」とプロンプトし、テンプレートを出力税理士が金額・摘要を確認・修正
消費税計算シート課税区分ごとに集計「課税売上・非課税売上の集計表を作成」で基本構造を生成税理士が区分判定・税額を再計算
固定資産台帳取得価額・償却額を手計算「定額法の償却表を生成」で計算式を作成税理士が耐用年数・残存価額を確認

税額計算の禁止: Claude Code に「税額を計算して」と指示しても、最終的な税額は税理士が電卓・専用ソフトで再計算し、申告書に転記する

調書テンプレートの整備

法定調書(支払調書・源泉徴収票など)は毎年フォーマットが微修正されるため、Excel マクロや PDF 帳票のメンテナンスが負担になります。Claude Code は以下の支援が可能です。

  • Excel VBA マクロの生成: 「A列の支払先名をB列の支払金額と紐付けて支払調書を出力」といった指示で、マクロの骨格を作成
  • CSV → PDF 変換スクリプト: Python で「CSV データを読み込み、所定のレイアウトで PDF 出力」するコードを生成
  • フォーマット変更への対応: 「令和◯年分の源泉徴収票フォーマットに合わせて列を調整」と指示し、レイアウト修正を支援

ただし、生成されたマクロは必ず動作確認とコードレビューを行い、意図しないデータ改変や出力ミスがないかチェックする必要があります。

顧問対応文書の作成支援

決算後の顧問先説明資料や、税務論点の整理メモは、有資格者が口頭で伝える内容を文書化する作業です。Claude Code に「決算書の主要科目の増減理由を箇条書きで」と指示すれば、下書きが数秒で得られます。

1. 論点の洗い出し — 「今期の売上増加要因を3点挙げて」と指示し、箇条書きを取得

2. 税理士が内容を精査 — 生成された箇条書きが顧問先の実態と合致しているか、誤解を招く表現がないか確認

3. 顧問先名・固有名詞を追記 — 匿名化した下書きに、実際の顧問先名・プロジェクト名を加えて完成

この流れなら、機密情報を AI に入力せず、かつ文書作成時間を短縮できます。

社内研修と運用ルールの整備

Claude Code を事務所全体で活用するには、有資格者だけでなく補助スタッフも含めた研修が必要です。以下の項目を研修内容に含めることを推奨します。

  • 禁止事項の明示: 個人番号・実際の財務データの入力禁止、税額計算の禁止
  • プロンプトの基本: 「〜を作成して」「〜の形式で出力して」といった指示の型を共有
  • 生成物の確認手順: 必ず有資格者がレビューし、承認印を押す運用
  • トラブル時の対応: 生成されたコードが動かない・出力が意図と異なる場合の報告経路
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研修の例: 「架空の顧問先 A 社のダミーデータで勘定科目内訳書を作成し、税理士が確認・修正する」というロールプレイ演習を実施。実データは使わず、安全に操作を習得できる

/blog/claude-code-introduction では、初めて Claude Code を使う法人向けの導入手順を詳しく解説していますので、併せてご活用ください。

他の AI ツールとの役割分担

会計事務所では、Claude Code 以外にも会計ソフトの AI 機能・RPA ツール・OCR など複数の AI を併用する場合があります。それぞれの役割を整理すると、無駄な重複投資を避けられます。

ツール主な役割Claude Code との違い
会計ソフトの AI 機能仕訳提案・勘定科目推定仕訳入力に特化。文書作成・マクロ生成は苦手
RPA ツール定型操作の自動化(ブラウザ操作・データ転記)コード生成は不得意。繰り返し作業の自動化が得意
OCR サービス紙・PDF の文字認識テキスト抽出に特化。認識後のデータ加工は別ツールが必要
Claude Codeコード生成・文書下書き・テンプレート整備プログラミング支援に強み。仕訳入力や OCR は専用ツールに任せる

複数ツールを組み合わせる場合、「OCR で読み取ったデータを Claude Code で整形し、会計ソフトに取り込む」といった連携シナリオを描くと、各ツールの強みを活かせます。

よくある懸念と対応策

Q. 税理士法違反のリスクはないか

A. AI が税務判断を行うと税理士法違反の可能性があります。対策として、Claude Code には「下書き作成のみ」を依頼し、最終的な税額計算・適用判断・顧問先への助言はすべて有資格者が行う運用とします。社内ガイドラインに「AI は補助ツールであり、専門判断は行わない」と明記し、全スタッフに周知してください。

Q. 顧問先への説明責任をどう果たすか

A. 顧問先から「AI を使っているのか」と問われた場合、**「下書き作成に AI を活用しているが、最終確認は税理士が行っている」**と正直に説明することを推奨します。守秘義務の遵守状況(匿名化・ログ管理)も併せて伝えれば、信頼を損なわずに済むケースが多いと考えられます。

Q. 繁忙期だけ使うのは現実的か

A. 繁忙期のみの利用も可能ですが、普段から少しずつ慣れておく方が効果的です。閑散期に調書テンプレートを整備し、繁忙期に実データ(匿名化)で運用する――という段階的導入が、現場の混乱を避けるコツです。

まとめ

会計事務所が Claude Code を導入する際は、最終判断は有資格者が行うという大前提のもと、申告補助資料・調書テンプレート・顧問対応文書の下書き作成を支援する役割に絞ることで、守秘義務と業務効率化を両立できます。

3段階
匿名化→生成→確認の基本フロー
4領域
禁止事項・プロンプト・確認・報告の研修項目
有資格者承認
すべての生成物に必須

社内研修で禁止事項とプロンプトの型を共有し、ログ管理とアクセス制限で機密を保護すれば、繁忙期の負担軽減と顧問先への迅速な対応を実現できる可能性があります。ただし、税法・労働法の解釈や顧問先への助言は必ず有資格者が担い、AI はあくまで「補助ツール」として位置づける――この線引きを守ることが、士業における AI 活用の鍵です。


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